待たせたな、同志達!
今回は憧れとエゴが生んだ、もうひとつのゲーム文化を紹介する

おいおいマジかよ……。
ここがあの、上海の南京東路か。
世界有数のショッピングストリート。
俺は火をつける。
タバコの煙が、やけに静かに立ちのぼる。
目的はひとつ――
去年オープンした、セガの旗艦店だ。

だがな、同志よ。
結論から言う。
普通すぎた。
綺麗だ。洗練されてる。

誰でも楽しめる、安心の空間。
だがそれだけだ。
レトロゲーマーの血が騒ぐような
“あの頃の匂い”がしない。

期待していた“何か”が、決定的に足りない。

「……違うな」
煙を吐きながら、俺は呟いた。
その時だ。耳に入った噂。
「ここから4駅先に、ヤバい場所があるらしい」
──偽物市場。
おいおいマジかよ……。
それ、完全に“当たり”の匂いじゃねぇか。
電車に揺られ、到着。
駅を降りた瞬間、空気が変わる。
ざわつき。
雑多。
そして、異様な熱気。
ここは、表の上海じゃない。
足を踏み入れた瞬間、理解した。
ここは戦場だ。
見渡す限り――
全部、偽物。
いや、逆に聞きたい。
本物どこだよ?
怪しすぎるレトロゲーム機。
どこかで見たことあるようで、どこにも存在しないフォルム。
Switchに似てるが、違う。
PSPっぽいが、違う。
全部“それっぽい”だけの存在。
そして始まる。
仁義なき値段交渉。
最初に提示される価格?
笑えるほど高い。
だがな――
ここからが本番だ。
言葉をぶつける。
間を詰める。
引いて、押す。
そして気づけば……
価格は、数分の一。
いや、場合によっちゃ
10分の1まで落ちる。
おいおいマジかよ……。
原価どうなってんだよ。
歩けば歩くほど、カオスは加速する。
レトロゲームの横に謎のマッサージ機。
ドローン、コントローラー、謎ガジェット。
ジャンルという概念が崩壊している。
ツッコミが追いつかない。
だがな――
妙に楽しいんだよ。
ここには“本物”はない。
だが、“熱”はある。
誰かが作り、誰かが売り、誰かが欲しがる。
その連鎖が、この場所を動かしている。
その奥で、俺は見つけた。
ひっそりと置かれた、本物のガンプラ。
その瞬間――
空気が変わった。
存在感が違う。
圧倒的に違う。
“本物は、黙っていても強い。”
俺はまた、タバコに火をつける。
煙の向こうで、考える。
この偽物たち。
ただのコピーか?
違うな。
これは――
“憧れの残骸”だ。
本物に届きたかった者たちが、
届かなかった先で生み出したもの。
技術が足りなかったのか。
環境が違ったのか。
それとも、ただの欲望か。
だが、そこには確かにある。
人間のエゴ。
「欲しい」
「売りたい」
「似せたい」
その感情が、形になった世界。
だからこそ、逆に思うんだ。
本物って、やっぱりすげぇ。
簡単に真似できないからこそ、価値がある。
上海は教えてくれた。
光だけじゃない。
闇だけでもない。
その両方があるから、面白い。
同志よ。
もしこの街に行くなら――
綺麗な場所だけで満足するな。
一歩踏み込め。
その先にあるのは、
リアルな“ゲーム文化”の裏側だ。
おいおいマジかよ……。
世界ってのは、まだまだ面白ぇな。